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April 22, 2005

№5 シニアのロングステイ Sさん その3

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その3
「新しい生き方への助走期間」

 今回は、Sさんのインタビューから、シニアの新しい生き方について考えてみましょう。
 「私は、お金のことよりも、リタイア後、人や社会の役に立つことは何かを探しつづけて、やっと見つけることができました。みんな探しているけれど、なかなかきっかけやチャンスがない。それとも日本人は自分で探し回るほどの積極性がないのでしょうか。日本には、60歳で定年を迎えたらそれ以降の生き方のシステムがなく、
後は個人で好きにやりなさいですからね」とSさんはいう。

 この言葉は、会社勤めをしてきた男性にとって、定年が個人のライフコースに与えるインパクトの大きさと、
定年後の個人のアイデンティティーや生きがい感の喪失の問題を言い表しているのではないでしょうか。
さらに高齢者の生き方を支える社会支援システムの不備という、日本社会の問題点を浮き彫りにしている。
 
 定年後の男性にとって、高齢期の生き方を確立することが、一般的に難しい。会社人間であった男性は、地域社会の中に自分の居場所が見つからないことが、まだ多いようです。地域活動やボランティア活動など、何かしたいけれど、どのようにしてよいのか分からない、また一緒に活動する仲間が見つからないといった理由で、最初の一歩が踏み出せないことが多いのです。

 個人が孤立することなく地域社会と結びつき、高齢期の生き方を確立することが課題になってきています。
Sさんは、ロングステイを媒体にして、新しい生き方に気づき、見つけることができた。日本の日常生活から離れて異文化の生活環境の中から、求めていたものを探し出すことができたのです。Sさんにとってロングステイが、これまでの人生や生き方から、新しい生き方へ転回するための助走期間になっているように思います。ロングステイが、新しい生き方への橋渡しとして機能しているのです。
 この意味で、タイの生活環境や地域社会が、新しい生き方を見つけたり、「生きがい」を感じたりする機会を与えているのではないでしょうか。海外でのロングステイが、個人のアイデンティティーや存在を再認識させ、個人をエンパワメントする機能を有しているのかもしれません。
 
 その一方で日本の社会が、地域や社会の持つ個人を支援する機能を低下させているのか、あるいは、これから新たに創り出していくのか、いずれにしても日本社会の課題である。高齢期の生き方を支える社会支援システムの視点に立って、タイと日本の両方の社会を考察することは、わたしの今後の研究課題です。

 長い会社中心の人生から、高齢期に向かって新しい人生へ転回し、ソフトランディングするために、準備期間や助走期間が必要なのである。
 ロングステイが、その役割を果たしているといえるのではないでしょうか。

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