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June 10, 2006

№410 定年後の職業観

  破壊された仏像 アユタヤにて
20050402_dscf0873

 立命館大学産業社会学部 前田信彦教授の「定年後の職業観」 (2005)という論文からです。

 人口の高齢化の進展は日本の雇用システムにも大きな影響を与えつつある。とりわけ団塊の世代が高齢期に入る今後は、高齢人口の増大とともに、これまでの職業経験あるいは生活経験を生かした多様なキャリア形成の制度の構築が必要である。そこでは高齢者を単なる「社会的弱者」として捉えるのではなく、社会を支える「アクティブ・エイジング」の世代と位置づける発想が重要となるであろう

 前田教授は、高齢期の生活と職業キャリア形成について、いくつかの考察を述べています。
 まず第1に、定年の意味の変化という点である。
 定年退職のイメージとして「経済的に苦しくなる」という割合は1991年からの10年間に増加しており、中高年齢者の雇用状況は厳しいものであったことが推測される。にもかかわらず「新しい人生が開ける」「自由な時間が取り戻せる」などの肯定的イメージも増加しており、この点で定年退職を第2のキャリア形成期と位置づけるような転機として前向きに意味づけるような定年文化が構築されつつある
 
 第2に、職業キャリア志向の多様性という点である。
 定年を迎える前の中高年層のキャリア志向は、妻の就業状態や世帯収入などの経済的条件によって左右される傾向が見られる。特に定年退職後にボランティア活動を志向する層は、経済的に恵まれた中高年である。しかし、定年退職後は同一企業グループで雇用延長や出向を志向する者は全体の23%程度であり、定年を契機とする職業キャリアの展開はボランティア活動や独立開業志向など多様性を持っている

 第3に、会社への関与を示す「職業的自律性」は、職業キャリア志向の多様性を促す1つの要因である。
 分析では、「長期継続雇用を前提に生活設計している」という項目は、概ねどのキャリア志向の者にも支持される傾向が見られたが、しかし「社外との交流」「個人的な職業能力の開発」や「転職・独立の準備」などは、ボランティア活動志向や、独立開業志向に多くみられた。
 このことは、職業的自律性の高い、非組織的・非会社的な志向を持つ中高年は、定年を契機として多様なキャリアを展開する可能性を持っているといえるだろう。雇用継続以外のボランティア活動志向や独立開業志向の者は、在職中から会社以外との関与を求めている。 つまり“会社人間”からの離脱現象は、とりわけ定年後の雇用継続を設計する者以外には、徐々に共有され始めていると推測できるであろう。
 さらに、定年後は雇用労働のみならず、ボランティア活動などを含めた多様なキャリア形成を支援することが社会的にも要請されるだろう。

 もっと長い論文なのですが、考察についてかなり端折って紹介しました。
 団塊の世代が、定年退職を第2の人生を切り拓く契機とする肯定的なイメージとして捉えつつあるといっています。また、長期雇用を継続する志向だけでなく、ボランティア活動や独立開業志向など多様なキャリアを形成する可能性があることを示唆しています。
 その中でも、これらを志向する方の“会社人間”からの離脱現象が、在職中から準備され始めていることは注目すべき点です。定年を迎えてからリタイア後の生き方や人生を考えるのではなく、在職中からその準備をすることは重要ですし、それが“会社人間”からの早期の切り替えや個性的で新しいシニア像を創造することにつながると思われます。
 団塊の世代が「アクティブ・エイジング」の世代として、超高齢化社会を支える主役になることを期待したいものです。

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