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April 16, 2007

№644 医療は国境を越える

   バムルンラード病院のロビー
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 06年10月28日の週刊東洋経済に「医療は国境を越える」と題して、世界の患者がバンコクの病院に押し寄せている実態をレポートした記事が載っていました。

 タイを訪れる外国人は、観光客やビジネスマンだけではない。世界中の患者がバンコクの病院を目指してやってくる。04年にタイの私立病院で治療を受けた外国人は110万人。02年から75%も増えた。
 単一病院としてはタイ最大のバムルンラート病院(以下、バムルンと略)は昨年、190ヵ国から40万人の患者を受け入れ、総売り上げの53%を外国人からの収入が占めている。バムルンの好敵手、バンコク病院も昨年の外国人患者は約10万人。01年から倍以上に膨らんだ。バンコクの私立病院の成長の原動力はメディカル・ツーリズム。“空飛ぶ”患者たちである。
 
 いったい、何が世界中から患者を引き寄せるのか。最先端を走るバムルンをのぞいてみよう。タクシーで乗りつけると、ベルボーイがさっとドアを開ける。吹き抜けの豪華ロビー。冷たいジュースの無料ワゴンが回ってくる。院内にはスターバックスがあり、和食レストランがある。97年に完成した新病棟のコンセプトは、ずばり「5つ星ホテルのような」病院である。
 「米国も日本もドクター・ファースト。ここはペイシェント・ファースト」。年中無休。診療は朝7時から夜8時まで。診療中は英語、日本語、アラビア語の通訳がつく。そして、お値段である。米国での心臓バイパス手術の費用は10万ドル。バムルンは1.2万ドル、米国の8分の1だ。
 さらに01年の「9.11」をきっかけに、中東の患者が押し寄せてきた。これまで治療目的で渡航していた欧米で、アラブ人への視線が一変した。ビザは取りにくいし、入国してもおちおち治療に専念できる環境ではなかったのである。バムルンが昨年、受け入れた中東からの患者は7万人。01年から年率65%で増えている。

 中東とは対照的に、実は日本人のメディカル・ツーリズムへの貢献は大きくない。健康保険に守られている日本人は、3割の自己負担で大概の治療を受けられるからだ。「タイの医療機器の価格は日本の2倍。ゆったりした個室の費用を含めると、全体の医療費は日本と似たようなもの」という見立てもある。
 また、日本にいる日本人は、病院間の競争で磨き上げられた医療には簡単にアクセスできない。「治療目的のための渡航」には健康保険が適用されないからだ。(旅行中の治療は原則、保険の払い戻しがあるが、適用の可否はその都度判断される)。

 タイの医者数は日本の26万人に対して3万人。タクシン前首相の「30バーツ医療」政策(無保険者は30バーツ払えば、どんな治療でも受けられる)のおかげで公立病院は戦場と化した。朝5時に整理券が配られ、何時間も待って診察はたった5分。日本のODA援助による胃カメラは耐用年数を超え、2つのライトの1つが壊れても使い続けられている。
 乏しい医療資源が外国人向けに振り向けられれば、タイの国内医療はさらに劣化する。メディカル・ツーリズムは、自国の医療格差の是正を海外に求めるうねりだが、それが受け入れ国の医療格差を押し広げる。行く手に待ち構えるのは、業の深いパラドックスである。

 以上が記事の概要です。タイの大きな私立病院は、ほとんどが利潤追求を目的とする株式会社の経営であり、厳しい病院間の競争にさらされています。したがって日本の病院とは経営方針や顧客である患者への対応も自ずと異なってくる訳です。高級ホテルと見間違えるほど立派な病院のロビーに足を踏み入れると、なるほどと納得させられます。
 優秀な医師と先端の医療技術、最新の医療機器を備えたバンコクの巨大病院は、記事が紹介するような経営方針に支えられながら運営されています。外国からやってくる患者やロングステイヤーにとっては安心な病院ですが、一方高額な医療費が支払えないタイの庶民にとっては高値の花の存在になっています。国内にありながらバンコクの巨大病院は、タイの一般庶民を顧客として考えていないとは皮肉なことです。
 バンコクの巨大病院は、タイ社会の医療面における“光と影”の象徴なのかもしれません。

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